リズムのチューニング

はい桐沢です

チューニングと聞いて皆さんが思い浮かべるのは、ギターのチューニング、ピアノの調律。それに今ではあまり聞かれないラジオのチューニングなどでしょう。

 
『リズムをチューニングする』 この言葉はあまり聞きなれないかもしれません。これは僕がLAで去年ぐらいから取り入れている事なんですが、非常に有効で演奏がしやすくなっただけでなく、様々なリズムに関する悩みも解決してくれています。
 
今回はあまり今まで聞いた事のない言葉『リズムのチューニング』という話をしてみたいと思います。
 

ドラムでリズムを説明するのは時代遅れ

リズムを説明する上での僕の大事にしている事は、譜面も楽器使わずリズムを身体ひとつで説明する。

以前『ドラムでリズムを説明するのは時代遅れ』というまあ、、、なんとも喧嘩上等な動画をYouTubeに出したのですが、もちろん理由があってのことです。

まずドラムセットという楽器は約100年前にアメリカで生まれたまだ新しい発明品です。しかも今の形のようなものではなく、最初は無声映画の音響効果役でした。
 
それに僕は譜面でもリズムを説明しません。譜面もまだまだ歴史の浅いものです。

僕はロサンゼルスでプロとして活動するドラマーですが、この考えのもと一回もこのブログやYouTubeでドラムを使いリズムやグルーヴを説明していません。
・ドラムセットが出来たからリズムが生まれたわけではない
・譜面が出来たからリズムが生まれたわけではない
 
このシンプルな考えのもとYouTubeで発信をしています。

耳の聞こえない世界最高のリズム奏者

最近、僕は打楽器奏者の彼女にめちゃくちゃハマっています。
彼女の名前はエヴィリン・グレニー。ドラマーではなく打楽器奏者です。(最近彼女のサイン入りの写真まで買っちゃいました 笑)
 
何度もYouTubeで紹介しているのですが、彼女は8歳の時に聴覚を失い始め、12歳で完全に聴覚を失いました。しかし彼女は僕が聞いて来た中で、世界最高峰のリズム感を持っていますそれも別次元レベルです。

聴覚障害のため彼女は耳から音を聴くという事が出来ません。ではどうやって音楽を聴き、音楽を作り出しているのでしょか?

振動の世界

エヴィリンはこう説明します。

『私は音を顎から、頬から、頭蓋骨から感じます』『スティックを使った時は指から感じます』耳の聞こえない彼女は振動で音を捉え感じ、全身を音を響かせる道具として使っているのです。

「私たちの身体は音を感じるのに適していて、私はその能力を失いたくない」
 
彼女は身体全体で音を聞くという事を必ず一番最初に子供達に教えるそうです。耳ではなく『身体全体で音を聞く』 というイメージを持つ所から始める
 
ぜひ彼女の素晴らしいスピーチを聞いてくだい (設定で日本語字幕もつけられます)
 

これは胡散臭い話でも何でもなく、僕らの鼓膜は音を振動で感じ、震えることによって電気信号を出し脳に伝わり音と認識されるのです。
 
このTEDの素晴らしいスピーチの中で彼女はこんな話をしています(日本語の翻訳とは少し違うかも)
 
『世界のコンサートホールを設計する設計師が私たち聴覚障害者の団体に意見を求めに来る』
 
ここから考えられることは、音のプロであるコンサートホール設計師は聴覚障害者専用のコンサートホールを設計しようとしているのではなく、人間の身体に届く音が出せる設計はどんなものかを知るために聴覚障害者の意見を求めて来るのです。
 
音のプロであるコンサートホール設計師は音に振動というものが含まれており、これが人間の体に大きな影響を与えることを知っているのです。
 
楽器を操る僕らは楽器演奏者であって音のプロとは少し違うのです。

振動の方がより音が聞こえる

このエヴィリン・グレニーのDVDのなかにとても興味深いシーンがあります。
彼女が同じ聴覚障害のある学生の女の子に音の聞き方をレクチャーする場面。

大太鼓の胴の部分に学生の手を置いて打面を叩くのですが、僕ら健常者の音が終わったと思うポイントを過ぎても彼女たちはまだ振動で音を聞いている。その後彼女はこう続けました

耳で音を聞くより振動の方が長く聴ける、という事は

「私達の方が音をもっと聴けてる」
と聴覚障害がある彼女が聴覚障害を持った学生の女の子に言います
 
ここで僕は号泣😭

こんな言葉、僕らからは絶対に出てこない

このシーンだけでこのDVDを買った価値は十分ありました。

聴覚に障害を持つ彼女らは僕らとは全く違う音の聞き方をしています。 しかも僕らよりも聞けてるのです。それが振動、さらに先ほど書いた通り『世界最高峰のリズム感』を持っています。

音は耳からという固定概念

僕らは音を耳で聞くという固定概念に縛られています。どういうことかというと
 
僕らは音をどうやって聞いているか正直自分たちで把握していません。どのような身体の器官が反応し、それらがどのような役目を果たし結果的に音となる
 
これをちゃんと説明できるミュージシャンはおそらくいません。耳鼻科の先生はできるかも
『聞く』『聴く』という字は 書いて字のごとく耳です。しかしエヴィリン・グレイニー は耳が聴こえません。彼女は身体で音を振動で聞けているのです。
 
では彼女が聞いている物は僕らには聴こえないのでしょうか?
 
そんなことはありません、僕らも確実に感じています。
 
生の和太鼓、クラブでの重低音、道路工事からも、音が大きいものからは感じるというのは皆さんもわかると思います。人間の感じる、光、音は全て振動です。 これはリズム学者のマスタークラスで一番先に説明されるものです。
 
僕らはこれらを振動とは感じずに、日常的、普遍的に変わらずあるものとして日々過ごしています。僕らの身体はしっかりとそれらを受け止めています。
 
しかし僕らの身体から感じるこの振動、僕らは感じていながらも音楽と結びつけることはあまりして来ませんでした。僕らも間違いなく彼女が感じている音を身体から感じることができるのです。
 
実際に両耳に思いっきり指を突っ込み地面をかかとで蹴って下さい。かなり大きな振動を感じませんか? これが彼女の感じている『振動』の音の世界です。
 
僕らは音は耳で聴く物という固定概念の中、耳以外の情報や意識をシャットダウンして来てしまいました。
 
この彼女の示してくれたことから 音やリズムの成分は耳から入ってくる物だけはない と確実に言えます。

むしろ耳から以外の情報が大事なのでは?

振動を感じよう!

ではこの振動を感じるという事をどうやって身体に入れていくか。一番の振動を取り入れたリズムトレーニング は身体を動かす事
 
世界のリズム感がいいというイメージがある国には、踊るという事が文化の中で生活に密着しています。僕ら踊るという事は日常的に少ないのですが、歩くという事はします。
 
リズムに乗って歩く、これはアフリカ人もやっている事です。
 
ずっとオススメしているこのCD 僕はこれを聞きながら何年も近所のスーパーまで踊り歩いて行っています。
 
こちらの動画でこのCDの曲を使いアフリカン・コンセプトでの歩き方の説明をしています
 

この歩く時に振動というコンセプトに注目すると、歩いている足から『振動という情報が身体をつたい聞こえる』 という事に気づけます。
 
これが僕らが普段感じていたはずなのに、そこに気づくという事を今までして来なかった物で、
エヴィリン・グレニーが感じている音の正体です。

リズムのチューニング

先ほどのCDと一緒に歩くという事で、アフリカの音楽に乗った足から強烈なリズムの振動を感じる。これと耳から入ってくるアフリカ音楽の音という振動を身体の中で合わせるというイメージを持つ。
 
これを僕は『リズムをチューニングする』と考えています。
 
これはけして西洋式の譜面や習ってきたリズムの解釈とは大きく違いますがリズムを使ったトレーニングである事は間違いありません。
 
ここから新しいリズムトレーニング、いや本来僕ら人間が持っていたであろうリズム感を取り戻す。
というリズムへのアプローチがこれからはメインストリームになるはずです。
 
このリズムのチューニング、バンドのアンサンブルにも使えそうじゃないです?
 
まずドラムから。ベースドラム、スネア、ハイハットのこの別々に出る振動を身体での中でチューニングする。そうするとドラムセットという一つの楽器になる
 
その上にベースの振動を合わせる。当たり前の話かもしれませんがベースやギターにはピックアップという機械が付いて、それらが弦を揺らすことによて起きる振動を電気変換しアンプで音を増幅させているのです。
 
今度はギターの振動を合わせる。ベースと同じことですね!
 
今度はヴォーカルの振動を、、、。
ここで一度、喉元下あたりに手を当てて声を出して下さい、震えているのがわかると思います。
 
そう声も振動なんです。
 
この振動によって繋がったバンド、リズム的には良さげになりそうじゃないですか?
それをなんと呼ぶかは、、、。

リズムの新しい解釈

このイメージを僕はロサンゼルスでのドラムの仕事現場で使っています。
意識をする事で演奏がかなり楽になりました。
 
エヴィリン・グレニー は言います
『振動を身体に響かせることによてあなたは楽器の一部になる。楽器の一部になるということはあなたは音の一部。私たちの身体は振動増幅マシーンだ』
 
彼女が言うように僕らの身体というのは実は振動を感じやすく、それを使いこなす事ができるマシーンなのかも知れません。
 
音やリズムは耳から伝わってくるものだけではない、むしろ最大の要素は耳以外からかも知れません。 それをエヴィリン・グレニーが証明してくれています。
 
彼女の音を感じている世界、そこに僕らも意識を向ける事ができたらこれまでとは違ったリズムの解釈ができ、何か先に進めそうじゃないですか?
 
最初にも言いましたが、彼女は僕が聞いて来た中で世界最高峰のリズム感を持っています。それも別次元レベルです。
 
これらは全てアフリカンコンセプトにつながり、さらにその先にリズムの本来の姿が見えてきます。
 
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