はい桐沢です!
様々な場所で何かと物議のタネになる音楽用語『グルーヴ』皆さんも聞いたことがあると思います。
僕はドラムを使い13年以上アメリカで仕事をしていますが『グルーヴ』の本当の意味の定義はまだボンヤリとしか見えません。しかし1つだけ言えるのは日本で言われている『グルーヴ』とアメリカで使われている『グルーヴ』の言葉の意味が大きく違うという事。
では一体この『グルーヴ』という言葉はアメリカではどのよう意味を持ち、使われているのでしょうか? 少し変わった視点で具体的にしていきたいと思います。
日本での使われ方
『スティーヴ・ジョーダン、世界最高峰のグルーヴ・ドラマー』などの僕らが憧れる至高の物にも使われる時もあれば、『ドラムのかっこいいグルーヴ』などの演奏技術を表す時にも使われる言葉『グルーヴ』
・この居酒屋グルーヴしてるね ・ヤツが来るとグルーヴしだす ・このカレーのグルーヴ ・顔がグルーヴする(以前のアンケートより笑)
など居心地の良い雰囲気を表す言葉としても使われ、時には『グルーヴ』という言葉の定義を巡ってSNS上で論争が起こるなんとも不思議な言葉です。
正直なところ言葉の用途が曖昧で実態を掴めないからこそ様々な場面で使われ、僕らを本質から遠ざけているとも言えます。
🇺🇸のヒエラルキー
正直このブログを表に出すのは勇気がいります。
僕は13年以上アメリカでプロとして活動していますが、メタリカと一緒に世界ツアーをしたわけでもなく、レッチリのレコーディングに参加した経験もないフリーランスのドラマーです。
アメリカの中でもミュージシャンのヒエラルキーはもちろんあって、上の写真でいうと赤い人がスタープレイヤー(ちなみにアーチストはこの話には含まれません)
皆さんがイメージするアメリカのプロドラマーは大体がスタープレイヤー。名前を少し上げるとLAではヴィニー・カリウタ、デイヴ・ウェッケルなど皆さんも演奏は聞いたことがなくても名前は聞いたことがあると思います。
自分の名前でお金が稼げる人たちスタープレイヤー。そんな彼らの下にはWorking Classという黄色い人の枠があり、いわゆる専門職の枠です。ここに僕は入っています。
この専門職の情報はほとんど日本に伝わる事はありません。
僕ら専門職は自分の名前や自分の音楽ではなく、ドラムが必要とされる場所に単発契約で雇われます。スケジュールが合わないとしたら、すぐ次の専門職ドラマーに電話が行くというドライな世界。
僕らはスタープレイヤーではないので、いくらでも代わりはいます。これだけだと過酷な世界に聞こえますが『代わりが必要』という事はそこに潜り込めるチャンスも大いにあるという事です。
LA豆知識
『次の専門職に電話が行く』という事から仕事を持ったクライアントには専門職ミュージシャンのリストがあり、上から順番に仕事の電話をかける。ここから一番最初に電話が行くミュージシャンを『ファースト・コール』と呼びます。
アメリカでフリーランスのミュージシャンとして生計を立てるならまずこの『リスト』に乗ることを目指さなくてはいけません。
それにLAは毎日、毎週、毎月、毎年のようにミュージシャンとして名を挙げてやろうと世界から『凄腕』が集まります。海外からだけでなくアメリカ国内の有名音楽大学を卒業した新鮮な凄腕ドラマーも希望と野心を胸に『ドラマー』という椅子取りゲームに参戦してきます。
そんな椅子取りゲームの中、僕は13年以上リストに乗り続けてきました。これは僕に特別な才能があった訳ではなく『お金を稼ぐには?』というビジネスマインドを演奏技術よりも優先した結果だったと思います。
ビジネスから考えるグルーヴ
アメリカのナイトクラブでの音楽ビジネスの話をしたいと思います。
僕の最初の頃の主な収入源はナイトクラブでお客さんを一晩中躍らせるバンドの仕事でした。
時間的には夜の9時半から始まり深夜1時半まで、45分4セットで音楽は全て8ビートという仕事。ビジネスの話なんでお金を支払ってくれる人を『クライアント』としましょう。
バンドは誰に雇われるか?そのナイトクラブ、まあお店ですね。お店がお金を払ってバンドを雇う。僕らの最初のクライアントはお店です。
ではそのお店のクライアントは一体誰でしょう? そう踊りにくるお客さんです。
みなさんミクシーってご存知ですか? Facebook、インスタ、ツイッターなどのSNSが出てくる前の日本オリジナルのSNS。
2006年に僕が初めてナイトクラブでダンスバンド仕事をした時の書き込みはこんな感じでした。
「アメリカ人、すげー踊る ちょーウケるんだけど〜」
僕はその時、踊りを楽しむ大勢の人を人生で初めて見たのです。そこから導き出された言葉が『ちょーウケるんだけど〜』でした。
正にカルチャーショック
お金の流れ
🇺🇸ナイトクラブのビジネスはこのように成立しています。
お客さんに踊ってもらい
汗をかいて喉を乾かせ
ボッタクリ価格でお酒を飲んでもらう
皆さんもご存知のようにスーパーで200円で買えるビールがクラブで飲むと800円とかじゃないですか!
その為にはお店は売り上げに貢献してくれるバンドを雇う、お客さんの踊りを止めないバンドが必要。そのお客さんを躍らせるバンドを支える役目を担っているのが僕らドラマーなんです。
という事はドラマーである僕らの最終的なクライアントは踊っているお客さんとなります。
ビジネスですのでそのクライアントであるお客さんの欲しているものを提供する。これが僕らの仕事になりお金を稼ぐ事につながります。
ではそのお客さんは何を求めていると思いますか?
それはお客さんがお店に来る目的『気持ちよく踊るという事』
バンドを見にきているのではなく
踊って
飲んで
ストレス発散して
また日々の生活に戻って行く
これが音楽ビジネス、いや文化の中でのビジネスとして長い間アメリカ行われている事なんです。
そのバンドを見にくることが目的ではないお客さんは何を求めているか? それは踊れる音楽。
心地よく踊れる音楽に陶酔する。これこそが最大の目的でミュージシャン個人の楽器の技量を見にきているわけではないのです。
お客さんを躍らせるには、けしてドラマーが喜ぶドラムを叩くドラマーではないのです。当たり前ですがお客さんは近所の普通の人です。
ビジネスから導き出された
『お客さんはバンドを見にきているのではない』
これこそが日本とアメリカの『グルーヴ』という言葉の違いを紐解く鍵になります。
日米の楽しみ方の違い
『ビジネスからグルーヴを考える』この中でお客さんは何を求めているか?
僕はこんな仮説を立てました!
・日本は音楽を耳と目で楽しむ
・アメリカは音楽を耳と身体で楽しむ
例えばブラジル、アメリカ、キューバ、アフリカ(まあアフリカは国ではないのですが、、)これらの国の名前を聞いてリズム感が悪いとのイメージはありますか? おそらく逆にリズム感が凄い良いとの印象があると思います。
これらの国はもれなく音楽で踊るという事が文化の中で生活に密着しています。本当によく踊るんです。
日本で僕が聞いた『サンバにはサンバのグルーヴ』『ロックにはロックのグルーヴ』がある!
この誰も疑問に思わず言っている事は果たして本当か? そんな事を検証した記事をこちらで書いています。お時間のある時に是非!
『音楽によってグルーヴは違う』のか?
先ほどの僕のミクシーの日記 「アメリカ人すげー踊る!ちょーウケるんだけど〜」ここからも読み取れるように僕はアメリカで初めてバンドを目で見ずに音楽を身体で感じるお客さんの前で演奏したのです。
一方日本では、お客さんは音楽を耳と目で聞きに行く。
もちろん全てではないですが、音楽を聴くときは必ずバンドに視線を向けています。バンドを目で見て音を聞いて楽しむ。
もちろんアメリカでもアーチスト目当てにライブに行きますが、その会場で踊っている人も多くいます。昔のJames Brown や Earth Wind & Fireのライブ映像では会場全体が踊っているのがよく見えます。あの熱気は本当に最高です。
なかなか日本からは想像しにくいかもしれませんが、ライブの楽しみ方も日本とアメリカでは大きく違うのです。
違いが違い生む
お金を稼ぎたかったら『お客さんの求めていることを徹底的に追求する』これはビジネスの普遍の原則です。
お客さんの楽しみ、欲している物に応えるのが僕らミュージシャンの役目だとしたら、目と耳で音楽を楽しむ人にはそれを提供しなくてはいけませんし、身体で音楽を楽しむ人にはそれを提供しなくてはいけません。
この二つは同じものと言えるのでしょうか?
日本とアメリカのお客さんの音楽の楽しみ方、需要に大きな違いがあり、それに答えなくてはいけないミュージシャンには必然的に違いが生まれます。
当然ながら必要とされる音楽や音も大きく違います。ここにこそ日本とアメリカの『グルーヴ』という言葉の違いを感じませんか?
アメリカには踊るという文化があり、そこにビジネスが発生しています。その中で求められるものは日本で求められている事とは全く違います。 グルーヴにハマって踊り続ける。 これこそ僕らのクライアントが求めている事なんです。
これは才能でもなくテクニックでもなく文化の違いで、けして練習では埋めれない違いなのです。
そこから連想される必要なものはみなさんが聞いてきた『グルーヴ』の定義と重なりますか?
この記事が面白いと思ったらシェアしていただけるとアメリカから僕がベッドから転げ落ちるくらい喜びます!
さらにこの記事を動画にしています! ではLAから桐沢でした!
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